自律訓練法のやり方を説明する前に、ストレスと身体のことを理解していると、よいイメージをもって訓練ができるので、回りくどいですが、まずその話を聞いてください。


ストレスと身体反応


 ストレスは自律神経と内分泌(ホルモン)、免疫系を介して、人体にいろいろな影響を与えます。ここでは、主に自律神経系の話を中心に説明します。といいますのは、自律神経が意識的にコントロールするには一番扱いやすい機能だからです。

 まず、自律神経の働きについて説明しましょう。
 自律神経は全身にくまなくいきわたっており、交感神経と副交感神経が互いに調整しあいながら全身のバランスを保っています。
  大ざっぱに言うと、交感神経系がアクセル、副交感神経系がブレーキ、あるいは交感神経系がエネルギー放出活動、副交感神経系がエネルギー蓄積活動を司っているのです。そして活動時には交感神経が活性化され、休息時には副交感神経が活性化されます。

  通常は身体は、意識しなくてもこの自律神経系によって、丁度よいバランスが維持されています。自律神経系は身体中の内臓、筋肉、皮膚にくまなく張り巡らされ、昼間活動時には交感神経が優位になり、食後や睡眠中は副交感神経が優位に働き、エネルギーの消費と貯蓄のバランスを維持しています。そして、それは普通は意識されることはありません。意識しようとしまいと、心臓は拍動し、呼吸が止まることがないように。
(自律神経系の詳しい機能については別項目で説明します)

  このような働きであるゆえ、自律神経系はかつては植物神経と言われ、人間の意志ではコントロールできないとされていました(する必要も普通はありません)。しかし、ヨガの行者に代表されるように、訓練によって、自律神経系をコントロールできるのです。そこまでしなくても、激しい運動をして息が上がった時に誰もが深呼吸して身体の調子を整えたり、疲れた時には大きく呼吸をしながら背伸びをしたりしますよね。誰に教わったわけでもなく、誰もがそうすると身体が整うことを知っているのです。

 このように、身体に何らかのストレスが加わった時、その自律性が脅かされるので、意識的に再調整する必要がでてきますが、それも通常は無意識に行っています。さらに強いストレスが加わった時が問題です。

  人体は急激なストレスには瞬時に対応しますが(最近でも映画をみて突然死した例があるように、それがあまりにも強いと致死的なことも起こりますが極まれです)、それほど強くなくても慢性のストレスが続くと、自律神経系のバランスが崩れ、不眠、食欲不振を代表に、さまざまな症状が出現します。それが高じると、精神疾患あるいは身体疾患にも発展してしまいます。

 強いストレス、慢性のストレスを自覚した時に、それをいち早く自分でコントロールできたら、問題をこじらせることなく過ごせるかもしれません。そこで、自律神経系の反応を意識的にコントロールしようと試みるのが自律訓練法なのです。(短期的には自律神経系を、長期的には内分泌、免疫系にも影響を与えます


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