当院での治療には特別なものはありません。通常の内科学、心身医学、精神医学をベースにした、ごくオーソドックスな医療を行っています・・とはいっても、人は機械ではないので、どうしても医師個人の価値観、人生観などなどが影響するのは当然と言えます。
近年、医学はEBM(Evidence Based Medicine=根拠に基づく医学)というものが重視されるようになりました。これは、医師個人が勝手な価値観で、独りよがりな医療を行わせないために、また施設によらず最低限の医療水準を維持するためには欠かせない考え方であると思います。
ただ、困ったことに、根拠に基づくようなデータがまだ集積されていない疾患があること、心療内科や精神科的疾患の一部には関わる要素が多すぎて身体疾患を治療するほどクリアカットにいかない場合があることなど、現実はそれほど簡単にはいきません。
また、時代と共に、疾患をmassとして扱うような、平均的なやり方で人を扱うより、個としての固有性を大切にすることが求められています。
EBMに対してNBM(Narrative Based Medicine=物語に基づく医学)という概念が注目されています。いくら科学が命を数量化して理論で説得しようとしたところで、生きている私たちは自分の人生という物語を生きているわけなので、そういった概念がでてきたのは当然といえるでしょう。
ただ、EBMとNBMは相反するものではなく、相互に補完するものであると言えます。自分の物語にそって、全く根拠のない心霊治療を受けて死んでいっても本望だわという人もいるでしょうが、それを押しつけられたらたまりません。「最低限、根拠に基づいた医療をしてください。それで補えない部分に対して、あるいはそれと同時に私の物語にそった関わりをしてください」というところではないでしょうか。
私は、「病む」というのは自分の物語を脅かされる、あるいは崩壊してしまう現象であり、回復というのは物語の再構成であると信じています。確かに病気は治ればそれでおしまいで、風邪や怪我くらいなら、深く考えるまでもなく、自分の今まで通りの生き方が続いていくでしょう。しかし、大きな病、慢性疾患、難治性疾患、死に至る病、あるいは精神に関わる病はそうはいきません。病んだことで何もかもがかわってしまいます。
通常、そういった疾患にかかると、その現実を重く取りすぎたり、軽く取りすぎたり、あるいは無視したりしてこじらせやすいものです。その現実を冷静に受け止め、消化し、今後の生き方を再構成できたならば、「一病息災」という感じでより健康になれるものです。
私の治療はそういう考え方を基本においています。白黒はっきりすること、結論を急ぐ、答えは必ずあるという速度と効率をものめる現代社会の悪しき面に洗脳されきってしまった私たちには、こういった関わりはじれったいかもしれません。しかし、急がば回れ、それこそが一番の近道であると私は信じています。

冒頭に、医療には医師個人の価値観や人生観が何らなの影響を与えると書きました。それでは困るという考え方もあるでしょうが、医療といえども人間関係の一つであり、個人が自分に合った道を選ぶことが大切であると思っています。ですから、むしろ私の考え方を明確にしておいた方が、選ぶ方としても選びやすいのではないかと思います。ただ、あくまでも基本には通常の医学的常識・良識を踏まえていることはいうまでもありません。

当院に受診した際の、検査・治療の流れについて紹介します。

当院の検査・治療


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