睡眠時無呼吸症候群
心拍変動の臨床応用1(Heart Rater)

これまでの説明から、心拍変動は通常の検査では評価できない自律神経機能を量的に評価できる優れた方法であることが分かっていただけたと思う。

心身症の場合、情動反応、疲労の蓄積、睡眠不足、慢性のストレスなどが、自律神経系、内分泌系(各種ホルモン)を介して身体症状を形成する。また、うつ病、パニック障害などの精神疾患にも多彩な身体症状が伴なったり、慢性の疲労感を自覚したりすることが多い。それについても、内科的検査では異常を発見されないことがおおいが、心拍変動には異常が現れる。

原因不明の身体症状で、精神科的にも身体医学的にも明確な診断がなされず、一歩間違えば、「気にしすぎ」とか「「仮病」のように見なされることがある。その場合も、心拍変動には異常が認められ、偏見から解放されることも経験する。

また強い身体的不調があり、普通に考えると不安、緊張による交感神経の過剰興奮が持続しているためと推測して検査をしたら、交感神経活動の亢進は認めないことがあったり、臨床的には明らかな交感神経亢進症状があるのに、ベッド上安静にして検査をしたら異常を認めなかったということもある。それは、場面依存的な過緊張であることを意味し、検査で異常がでる場合は、場面状況に依存しない持続的緊張、内的調節機構が破綻していることを意味する。

という具合に、血液や画像検査では検出できないような異常反応を見つけることで、治療の方向性がみえてきたり、治療効果の判定ができたりするのが最大のメリットである。

当院で行う心拍変動検査の一つは受診時にベッド上安静後、3分間の検査で評価するハートレーターという検査と、もう一つは24時間の日内変動を評価する二つの方法である。ここれは前者について説明する。

3分間計測した心拍変動を周波数解析して、0.1Hzを中心とするLF成分を交感神経活動の指標(上図SNS)、0.2-0.3Hzを中心とするHF成分を副交感神経活動の指標(上図PNS)とし、そのバランスで、現在の自律神経の状態を評価する。

例えば、疲れやすい、汗をかく、動悸がするという方で、SNSが極めて高く、PNSが低下している場合、症状の主たる成因は交感神経過剰亢進によることが分かる。

特殊な例では、自分はあまり自覚症状がないが、何か身体に変調を感じるという人で、心拍変動が全体に極めて少なく、さらにPNSが極めて低い方がある。この場合、精神的問題にとどまらず、不整脈による突然死や心筋梗塞のリスクもあると考えなければいけない。

また、慢性の食欲不振、無気力感、疲れやすさを主訴にされている人で、PNSは保たれているが、SNSが極めて低いことがある。その場合、過緊張が原因というより、気持ちに張りがない虚脱的状態であることが推察される。

このように、一見同じようにみえる身体的不調も、こういった方法で評価すると、一歩深いレベルで問題の理解ができて、それを治療につなげることができるわけである。


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